クロージング
これは法的助言ではありません。
タームシート
タームシートを受領した場合、24~48時間以内に意思決定し、署名するよう求められるのが一般的です。こうした場合、通常は共同創業者や弁護士、アドバイザーなどと協議する必要があることを伝え、1週間以内の猶予を要求することで、当該猶予が認められます。それ以上の猶予が認められるためには、複数のタームシートの同時受領という形でのレバレッジが必要となるのが一般的です。とは言うものの、避けなければならないのは、(交渉ポイント、さらなる時間的猶予の要請、受諾などにより)回答までの時間が長くなりすぎることです。投資家は長期にわたるオークションプロセスとなることを常に警戒しているため、あまりに長く待たせることは投資家の機嫌を損ねる、さらには受領済みタームシートの撤回にまで至るおそれがあります。
資金調達プロセスをタイトに管理している場合、複数のVCが当該プロセスに参加しているはずです。タームシートを受領したら(注:口約束や握手による同意はタームシートのオファーとみなされません)、当該プロセスに参加している、他の全ての投資家にタームシートを受領したことを通知します。投資家間で情報のやり取りがあるため、誰からタームシートを受領したのかを他者に明かしてはなりません。こうした質問を受けた場合は、タームシートの出所は書面に署名するまで明かさないことをポリシーとしていることを伝えてかわすことができます。
一般に、タームシートには、典型例として30日間有効でかつ署名と同時に効力を発する(それ以前は無効)、独占(「ノーショップ」)条項が含まれています。この条項は、タームシート署名後の競合オファーの獲得を目的として物色するのを防ぐためです。そのため、競合オファー獲得を狙える唯一の機会は、タームシート受領後から署名までの期間となります。これこそ複数の投資家がタームシート提出に向けて同じペースで動くようプロセスを管理することが重要になる理由で、このことにより所定のスケジュールの中で1つのタームシートをきっかけに競合オファーを受領する可能性が最大になります。
自社の評判失墜を恐れるVCは、署名済みタームシートを白紙に戻すことはめったにありません。白紙に戻す場合、その理由として一般的なのは、(1)VCがタームシート後ディリジェンス中に著しい問題(例:詐欺行為)を発見した、または(2)タームシートをオファーしたのが実際の権限を持たないジュニアパートナーだった、といった場合です。悪質な行為を行う者に対してYCは主にブラックリストへの掲載という形で制裁措置を講じるので、VCにはYCカンパニーを不当に扱わない特別なインセンティブがあります。
オファー条件が複雑な場合もあります。オファー条件を評価する際は、各種条項に付随する制限や条件が組み合わさって非自明的かつ長期的影響を有するドミノ効果を引き起こす可能性を精査するようにする、というのがシンプルな経験則です。経済は一時的な問題ですが、支配は恒久的な問題です。
例えば、以下のような取締役に関する条項があるかもしれません:
取締役は3人体制とし、そのうち1人はリード投資家が、残り2人は普通株式の過半数を保有し、従業員、役員またはコンサルタントとしてその時点で企業にサービスを提供する者がそれぞれ指名する。
この体制下では、投資家自身が取締役会の1席、普通株式の過半数(創業者が管理しているのが一般的)の保有者が2席を確保し、取締役会は創業者の支配下にあるように見えます。少なくとも創業当初はそうです。
しかし、「その時点でサービスを提供する者」という条項は何を意味するのでしょうか。これは、創業者が企業を退職したまたは企業から解雇された場合、創業者が保有していた普通株式は計算から除外されることを意味します。創業者全員が退職した、または解雇された場合、まだ企業に在籍する創業者以外で普通株式の過半数を支配する者が、空席となった取締役を指名することになります。この取締役会は現在3人体制かつ創業当初は2対1で創業者に有利な状況のため、条項の組合せにより解雇され取締役の座を追われることを心配する必要はありません。しかし、シリーズB、シリーズCなどの資金調達を行った場合は取締役の人数が増えて、創業者が取締役会を支配していない可能性があります。そうなると創業者は、従業員、役員またはコンサルタントとして企業にサービスを提供していない場合という条件に当てはまり、普通取締役の空席の指名において創業者の投票はカウントされなくなります。これが長期的影響を有するドミノ効果です。
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YCにおける標準的なシリーズAタームシート
本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide