タームシート後にするべきこと

シリーズ A ガイド

タームシート後にするべきこと

タームシート後デューディリジェンス

タームシート後デューディリジェンス(別名:確認デューディリジェンス)は、ビジネスと法務両面に関する「チェックボックス」スタイルの質問で構成されているのが一般的です。

ビジネスに関する確認デューディリジェンスには、顧客訪問や特定の主要メトリックの精査、業務計画およびモデルに関するフォローアップ的な質問などが含まれます。このプロセスでは、創業者の身元調査も一般的で、通常業務の一環として行われます。この調査の範囲は雇用時によく行われる身元調査のそれより広範なのが一般的ですが、気付く可能性は低いです(話を聞く相手というより、収集されるデータという点でより広範なため)。

法務に関する確認デューディリジェンスについては、重要な問題が起きた場合に創業者の準備があまり整っていないと思われますが、幸いなことに重要な問題が起きることは稀です。一般に、重要な問題とは以下のカテゴリに分類されます:

  • IP (知的財産) 所有権に関する不備‐例:企業がコードを書いた人間から発明譲渡書を入手していなかった、創業者がかつての雇用者のノートパソコンでプロトタイプコードを書いた、またはコアテクノロジーは特許に大きく依存する分野(例:バイオテック企業)であり、自社が開発中のものに適用されるもので他社が保有する既存の特許が存在する。
  • 大型訴訟‐例:ビジネスの実行可能性を脅かす、またはVCから調達した資金の大半を費消する膨大なコストが発生する訴訟。
  • 資本政策表の問題‐例:さらなるオーナーシップを求める人物の存在、投資家による投資および株式発行前に是正される必要がある過去の株式発行に関する法的欠陥の存在。
  • 税に関する問題‐例:創業者が83(b) electionを行っていない、オプションが409Aに基づく価格より低い価格で発行されている。
  • 自社ビジネスの重大な妨げとなる極めて不当な契約‐自社のTAMを事実上縮小させる独占契約または他社が自社ビジネスを取得する(事実上イグジット時の価格を制限する)権利などの非常に厄介な問題。

これらの問題のいずれかが自社に起こり得ると思われる場合は、あらかじめ顧問弁護士に相談してそれらに関する最善の対応策に関する戦略を練っておくのが良いでしょう。

タームシート後プロセスおよびクロージング

正式文書に関する交渉

契約締結が通常のペースで進んでいる場合、正式文書に関する交渉はタームシートへの署名から4~5週間程度続くと理解しておいてください。賃金台帳作成の必要があるなどの理由で、さらに早く契約締結を済ませたい場合は、投資家や顧問弁護士にはっきり伝えてください。当事者全員が緊急性を共有していて、その緊急性が現実的である場合、タームシートへの署名からわずか数日で契約を完了させることも可能です。

SAFEまたは社債の保有者―特記事項

SAFEや大半のコンバーティブルノートはシリーズAラウンドのクロージングをもって自動的に転換されるものとして振り出されるのが一般的であるものの、投資家および/または投資家の弁護士はSAFE/ノート保有者全員またはその大半に対して、リード投資家によるクロージングおよび資金振込前に正式文書へ署名するよう求めるのが一般的です。これは一種のリスク管理です。SAFE/ノート保有者が正式文書に署名すると当該ラウンドの契約条項を受諾したことになり、クロージング後に契約条項に異議を唱えることもなくなります。例えばSAFEまたはノートの保有者が現状での株式への転換方法について異議を唱えてきても、クロージング後の資本政策表の修正は困難です。

これの実質的な意味は、リード投資家と文書をまとめた創業者はSAFE/ノート保有者に文書を精査し、署名してもらうための時間を与えるために、彼らへの全ての文書の送付に少なくとも3~4日みておく必要があるということです。その間はそれらの投資家から質問が来るかもしれませんし、時には具体的な要求(例:SAFEまたはノートの保有者からの将来的なPro-rata権または情報請求権付与の要求)があるかもしれません。こうした状況に対する適切な対処法はケース・バイ・ケースですが、準備を整え、一刻も早くラウンドのクロージングにこぎつけられるよう関係者からの早急な署名確保に尽力することが重要です。ディールの概要やSAFE/ノート転換の予備計算などの適度な情報をSAFE/ノート保有者に与えるのも有用ですが、与える情報量は多すぎてはなりません(ここでは弁護士が頼りになります)。多くの場合、彼らはこれが標準的なディールであり、株式への転換は適切に行われ、クロージング後に自分の持分はどうなっているかを知りたいだけです。

シリーズA途中での雇用―特記事項

2つのケースで雇用の継続が資金調達プロセスと相互に作用する可能性があります。

  1. オプションの発行‐先に説明しましたように、タームシートを受領して話が進み始めると、409Aバリュエーションは失効したとみなされ、創業者は(おそらくはより高い行使価格での)さらなるオプション発行前に新たなバリュエーションを計算する必要があります。これは、創業者はクロージングして新たな409Aを取得するまでは、資金調達中に採用した社員に対するオプション発行ができないことを意味します。
  2. シリーズAのオプションプール‐大半のタームシートには、「利用可能かつ約束前のオプションプールは、クロージング後キャピタライゼーション総額の10%に相当する」のような文言が含まれます。厳密に言えば、資金調達中に人材を採用すると、(そのオファーレターで)相手にオプションの約束をしています。ここで重要なのは、タームシート署名後の雇用者が10%という「約束前」の数字に不利に作用しないようにすることです。そうでないと、クロージング後に雇用した全員向けの10%、さらにタームシート署名時からクロージングまでに雇用された者向けに追加の数%により、創業者はプールを使用したさらなる希釈化に見舞われます。創業者と顧問弁護士は、「約束済」部分はタームシート前のオプションおよび雇用のみを対象としている点で見解が一致しているようにする必要があります。
リトレード時の対応

投資家が、タームシートで約束していた件について正式文書では異なることを要求し始める場合、「リトレード」が発生します。これは異なるまたはさらなる権利を要求することから、バリュエーションを含む当該ディールの経済的側面を実際に変更することまで様々なケースがあります。頻繁にこうした事態に至ることはありませんが、それは投資家には常に創業者との関係および自身の評判を維持するためのコストが発生するからです。これは今日の資本環境や創業者寄りの世論とも関係しています。異なる環境下ではこれがより一般的だったこともあり、創業者は大きな苦労を強いられていました。環境が再び変わる場合は、こうした事態に至る可能性に注意してください。

リトレードとなった場合:

  • 投資家にリトレードを呼びかけ、コストは投資家負担であると明言してください。これで相手が引き下がる場合もあります。
  • Y Combinatorまでご一報ください。YCネットワークの一員であることはチートコードとなることが多々あります。リトレードのコストは高まっているため、ここではこの手が役立つ可能性があります。
  • その他のオプションの検討してください。署名済みタームシートの前に別のタームシートを受領していた場合、リトレードが重要なものであれば別のタームシートを再検討する好機かもしれません。しかし、さらなるデューディリジェンス後に投資家が皆さんの企業にさらなるリスクを見出したことがリトレードの理由である場合のように、リトレードに関する説明が皆さんに悪影響を及ぼすことがないようにする必要があることは忘れないでください。独占期間の満了時期を把握し、他の投資家とのリトレードを始められる時期および彼らに話すことができる内容を顧問弁護士に確認してください。
  • リトレードが可能な点がないかも検討してください。こうした状況は不愉快なものですが、適正かつ現実的な成果は当初想定されたものと異なるものの創業者に都合がいいディールとなる可能性があります。
署名、送金、新取締役会、新企業

全てのデューディリジェンスおよび正式文書に関する交渉が完了したら、創業者とその他全員が契約文書に署名し、資金が振り込まれます。契約の一環として投資家が取締役会に加わる場合は、この時から任期開始となります。

資本政策表は法的に交渉を経たものとなり、交渉していた権利や条項は全て直ちに発効します。ここで重要なのは、クロージング時に劇的な変化を伴うのは貸借対照表だけではないということです。企業自体がそれまでとは異なるものとなり、異なった形での経営が行われます。

クロージング後に開始するべき行政手続き

新たな409A

409A企業の場合、クロージング後速やかに409Aにアップデートしてください。これにより、新たな409Aバリュエーションに基づくオプション発行が可能な時間が最大化されます。

新取締役会の開催頻度

取締役会の新メンバーは、取締役会の定期開催頻度を設定することになります。最低頻度は四半期毎に1回ですが、少なくともシリーズAとBの間では4~6週間毎など、より高い頻度での開催が一般的です。

有価証券報告およびマスコミとの密接な関係

これは自明ではないですが、理解しておくと大いに役立つ可能性があります。資金調達のクロージング時、企業は資金調達届(証券発行届)を連邦当局(SEC)または州当局(例:カリフォルニア州企業局)に提出することが法律で義務付けられています。

連邦当局と州当局どちらに提出するかの選択は重要です。SECへの提出は多くのサービスによってチェックされており、その情報は自動的に解析され企業の資金調達に関するニュースとして発信されます。フォームDと呼ばれる書面を連邦当局へ提出する場合、基本的に資金調達の事実を公表することにもなります。しかし、理想的にはそうした発表は自社で管理する必要があります。そのため、クロージング後15日以内(フォームDの提出期限)の発表で問題ない場合は、マスコミへの発表後に提出を行ってください。

しかし、まだ状況を公表したくない場合や、発表をしばらく先延ばししたい場合は、報道の観点から、州当局への書面提出がより良い選択肢となります。厳密に言えば、法律的な観点から、そしてあまりに専門的でここでの議論には適さない理由からこれは好ましくありません(いつでも弁護士に相談することができます)。しかし、率直に言えば、シリーズAの全てまたは大半が機関投資家による投資である場合、(コンプライアンスの観点からは)連邦当局への提出も州当局への提出もほとんど違いはありません。

保険

企業総合、過失怠慢、D&O(会社役員)の各賠償責任保険に未加入の場合、シリーズAのクロージング後に加入するのも、ベストプラクティスです。適切な限度額については、ご利用の保険代理店へご相談し、投資家にもご確認ください。タームシートやディールには、上記の保険に関する最低補償レベルを定めているものもあります。

次のセクション:
ベンチャーデット

本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide