タームシート&クロージング
他の全ての投資家への通知
タームシートを受領したら、当該プロセス内で実際にパートナーになってほしいと考えている、他の全ての投資家にタームシートを受領した旨を通知します。なお、シリーズAにおいては、口約束や握手による合意はタームシートのオファーとみなされませんので、ご留意ください。また、投資家間で情報のやり取りがあるため、誰からタームシートを受領したのかを他者に明かしてはいけません。
こうした「プロセスを加速させる戦術」は、受領したタームシートを実際に受諾するつもりの場合にのみ、使用してください。なぜなら、タームシートを使ってVCにプレッシャーを与えることは、彼らに24~48時間以内にイエス/ノーの回答を迫ることになり、場合によっては他の全ての投資家を当該プロセスから排除してしまうおそれがあるからです。
オファー条件の確実な理解
オファー条件を評価する際は、各種条項に付随する制限や条件が組み合わさることで、目に見えにくく、長期的な影響を及ぼすような連鎖反応が引き起こされる可能性がないか、精査します。詳細については、タームシートのセクションを参照ください。
YCでは創業者と連携し、条項が「良好」でなくなる分岐点、それらの分岐点への対応策、合理的な交渉の時期および方法の理解に努めています。また、そうした経験を基に標準的なシリーズAタームシートを作成しています。
交渉するべき条項がある場合は、「交渉の方法」セクションを参照ください。
適切なパートナーの選択
幸運にも複数のオファーが届いている皆さん、おめでとうございます!この場合、パートナーになりたい相手を、選ぶことができます。ここで行うのがデューディリジェンスです。相手の投資家が取締役会のメンバーにふさわしいか精査する作業は、共同創業者を探す時の判断と似ています。まずは他者を交えた場所で相手の投資家と会ってみます。他の人の意見も聞いてみます―特に重要なのが、いわゆる裏ルートの意見です。その投資家から投資を受けたことのある創業者で、事業に失敗をした人や困難に見舞われた人の意見を聞くようにします。そうした話を聞けば、トラブルに見舞われた際に相手の投資家がどのような反応をするのか、知ることができます。
タームシート後ディリジェンスの完了
タームシート後デューディリジェンス(別名:確認デューディリジェンス)は、ビジネスと法務両面に関する「チェックボックス」スタイルの質問で構成されているのが一般的です。ビジネスに関する確認デューディリジェンスには、顧客訪問や特定の主要メトリックの精査、業務計画およびモデルに関するフォローアップ的な質問などが含まれます。このプロセスでは、創業者の身元調査も一般的で、通常業務の一環として行われます。
契約締結が通常のペースで進んでいる場合、正式文書に関する交渉はタームシートへの署名から4~5週間程度続くと理解しておいてください。賃金台帳作成の必要があるなどの理由で、さらに早く契約締結を済ませたい場合は、投資家や顧問弁護士にはっきり伝えてください。当事者全員が緊急性を共有していて、その緊急性が現実的である場合、タームシートへの署名からわずか数日で契約を完了させることも可能です。
全てのデューディリジェンスおよび正式文書に関する交渉が完了したら、創業者とその他全員が契約文書に署名し、資金が振り込まれます。契約の一環として投資家が取締役会に加わる場合は、この時から任期開始となります。
クロージング後の管理手続き開始
クロージング後は速やかに皆さんの409A担当事務所に連絡をし、409Aのアップデートをします。取締役会の定期開催頻度(最低頻度は四半期毎に1回)を設定します。企業総合、過失怠慢、D&O(会社役員)の各賠償責任保険に未加入の場合、シリーズAのクロージング後に加入するのも、ベストプラクティスです。
資金調達の完了時、企業は資金調達届(証券発行届)を連邦当局(SEC)または州当局(例:カリフォルニア州法人局)に提出することが法律で義務付けられています。フォームDと呼ばれる書面を連邦当局へ提出する場合は、基本的にラウンドについて公表することにもなります。まだ状況を公表したくない場合や、発表をしばらく先延ばししたい場合は、報道の観点から、州当局への書面提出がより良い選択肢となります。いずれにせよ、連邦または州当局いずれかへの資金調達届の提出は必ずしてください。
ベンチャーデットによる資金調達の検討
ベンチャーデットによる資金調達を検討している場合、シリーズA資金調達直後が最適なタイミングです。そうすれば、良い条件(金利、融資実行時期など)での交渉が可能となります。YCに参加している創業者たちが、ベンチャーデットのことを「基本的に使途が自由かつ希釈化を伴わない資金」(もちろん、融資条件によります)と表現してくれたことがあります。ですから、VCからの資金調達の上乗せとして検討するべき良い選択肢かもしれません。
では、本業に戻りましょう。
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本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide