投資家の選び方

シリーズ A ガイド

投資家の選び方

幸いにして複数のタームシートオファーを受領した創業者(注:シリーズA資金調達の準備が整った平均的企業は最大1~2件のタームシートを受領)は、その中からどのようにして選べばいいでしょうか。

シリーズAのリード投資家との契約は、今後10年続く関係の出発点となります。万事順調な場合、この期間を通して取締役が皆さんの企業に口を出すことになります。そのため、バリュエーションなどのバニティー・メトリック(虚栄の指標)ではなく取締役会メンバーの最適化が重要となります。

相手の投資家が取締役会のメンバーに相応しいか精査する作業は、共同創業者を探す時の判断と似ています。まずは他者を交えた場所で相手の投資家と会ってみます。他の人の意見も聞いてみます。特に重要なのが、いわゆる裏ルートの意見です。その投資家から投資を受けたことのある創業者で、事業に失敗をした人や困難に見舞われた人の意見を聞くようにします。そうすることにより、トラブルに見舞われた際に相手の投資家がどんな反応をするのか、知ることができます。創業者の話によれば、彼らが求めているのは「何でも賛成する」人物ではなく、尊敬の念をもって率直に話ができる人物です。

さらに、投資家の良し悪しは資金調達プロセス管理の手腕からも見分けることができます。優秀な投資家は、意見の一致を待つことなく迅速な決断をする傾向にあります。投資家が皆さんのパートナーとなることを決意した場合は、皆さんの企業は将来的に成功するという強い確信と信頼があったからでしょう。同様に、皆さんへの投資を見送る場合は、その理由を説明してくれるでしょう。

 

取締役に期待するべきこと

投資家はさらに2つの方法で企業に付加価値をもたらします。1つ目として、その強力なブランドが、マスコミ報道や人材採用、皆さんの企業に対する正当性付与の面でプラスに働きます(これは特に、大規模企業とのディール締結時に有効です)。2つ目は、追加投資が必要となった際のサポートです。大抵の場合、後から参加する投資家は投資先企業の正当性評価に関してシリーズA投資家を頼ります。そのため、創業者にとって必要になるのは、次回の資金調達時にシリーズA投資家が自社を強力かつ熱烈にサポートしてくれることです。

これについてはシリーズAの準備に関するパートで触れていますが、シリーズB資金調達でも同じくらい重要となる内容であるため、ここで再度触れておきます。投資家は皆、頭の中に自身のトップ企業リストを持っています。そうした企業に投資することを彼らは誇りに思っています。既存投資家のサポートは次回の資金調達ラウンド時の重要な兆候となるため、次回の資金調達ラウンドの4~6ヵ月前に自社はその投資家の投資先トップ企業リストに入るかどうかを尋ねておくことをお勧めします。自社がそのリストに入っていたら、大いに喜んでください。相手の投資家は自身のネットワークで皆さんの企業を推薦し、次回の資金調達ラウンドでは注目を集めるでしょう。一方、リストに入っていなかったら、その理由を尋ねて改善策を見つけてください。ここでは、どんな企業が投資家のポートフォリオ内で優良企業とみなされているか、その優良企業は投資家に評価されるために何をしているか、どうすれば自社がその優良企業に勝てるかを学ぶことも有益です。

 

取締役に期待するべきでないこと

経験や知性という点でいかに投資家が創業者を上回っていようと、投資家は創業者のビジネスの状況を知りません。取締役であっても企業に来るのは四半期に1回で、企業の現状を正確に理解するには全く不十分です。そのため、企業の意思決定において投資家が口をはさむことを防ぐよう、私たちは助言しています。「企業に害を及ぼさない」投資家を探してください。経営に口をはさむことで多くの価値をもたらそうとする投資家は、企業を混乱させるおそれがあります。最良の投資家は、適度な距離の保ち方を理解するに十分な経験を持った人物です。投資家は、微妙な人間関係の取扱いや経営幹部の採用など特定分野に関連する経験を企業に提供することができますが、最終的な意思決定は創業者の仕事であることは忘れないでください。

さらに、投資家が反応を見せるインセンティブの検討も重要です。以下は一般的な投資家の優先事項(降順)です:

  1. 自身の個人的評判およびブランド
  2. 自身の企業の評判
  3. 自身のリターンおよびリミテッドパートナーのリターン
  4. 投資先企業およびその成功

一般的にはこれらの優先事項は全て整合していますが、そうでない時もあります。後者の場合、投資家が創業者の意思決定を支配する仕組みを創業者は認識している必要があります。

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タームシート後にするべきこと

本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide