交渉の方法

交渉の方法

 

一般的な Tips

  1. 自分が求めているものを理解しましょう。自分が求めているものを明確に理解することなく交渉に入る当事者がいかに多いかを知れば、皆さんは衝撃を受けるでしょう。自分が求めているものを理解していなければ、自分は何を諦めることができるか、何に執着する必要があるかを理解することは不可能です。
  2. 専門用語を理解しましょう。これは基本的事項ですが、多くの場合、無視されています。文書に署名する場合は、内容に目を通して理解する必要があります。交渉で専門用語を使用する場合は、その使い方を必ず理解しておいてください。これは資金調達に関する専門用語(「プレ」、「Pro-rata」、「支配」)、雇用に関する専門用語(「ベスティング」、「クリフ」、「任意」)、そして皆さんが相手に伝えるそれ以外のほぼ全てにあてはまります[1]。
  3. 曖昧さを残さないようにしましょう。これは特に、創業者が面識のある投資家または採用するかもしれない友人と「友好的な」交渉をする際、行うのが最も困難なことの1つであることがわかっています。暗黙の了解であると自分が思っていることを、合意済みのことと決めてかからないでください。交渉する点は全て明確にしておく必要があります。このことからも必要となるのは…
  4. あらゆることを文書化しておきましょう。何かに同意する場合は書面で確認してください。これは、「Aaronと会っていただき、ありがとうございました。合意に従い、今回のラウンドにあなたから10万ドル(バリュエーション:500万ドル)投資いただけることを私たちは心から喜んでおります。」というメールのように簡潔なもので構いません。これで先方が確認してくれればOKです。書面での確認は直ちに行ってください。それにより、直接交渉で実際に合意したことに食い違いがあった場合にもすぐ分かります。重要なのは、沈黙が同意を示すことはないということです。
  5. 相手が自分の友人だからといって…自分が求めるものは何でも与えてくれる、または相手が求めるものは何でも与える必要があるわけではありません。このようにビジネスと友情を混同してしまうと問題が生じる可能性があるため、ディールはビジネスのためであることを心に留めておいてください。友人との交渉は曖昧さが残る可能性が最も高いものでもあるため、特に注意してください。
  6. 愚か者であることで得することはありません。世間によくある誤解に、卑劣な人間ほど交渉に強い、というものがあります。これは間違いで、相手として手ごわいのは交渉上手な人間です。彼らは重要なことについては粘り強く交渉し、重要ではないことについては寛容です。ここで重要なのは、交渉から相手との関係が始まる傾向があると心に留めておくことです。ぎくしゃくした関係から始めるべきではありません[2]。大抵の場合、創業者が企業経営している世界は驚くほど小さく、同じ人物に何度も再会するでしょうから、そうした相手と良好な関係を維持しておくのが得策です[3]。
  7. 約束は必ず守りましょう。これはおそらく最も重要なルールです。何かを約束したら、それを破ってはいけません。握手での約束であろうと書面での約束であろうと、何かを約束したら、その件に関する交渉はそこで完了します。約束を破ることは、自身の評判やこれまで築いてきた信用を傷つける一番の早道です。約束に不明確な部分がある場合は、ポイントを参照してください。ここで相手をだまそうとしたり、事後に新たな解釈をしようとしたりしてはいけません。(ある程度までの)思い違いならともかく、自分が承知のうえで交わした約束を破ることは許されません。

経験豊富なVCから資金調達をしている、または経験豊富なビジネスデベロップメントリードと契約の交渉をしている場合、彼らは交渉で生計を立てていること、そしておそらく皆さんより交渉を得意にしていることに留意してください。彼らは自分が求めるものを得るために創業者を誘導する方法を知っています。これは(通常)不当なことではなく、効率的なことです。こうした時には、より経験豊富なアドバイザーに助言を求めるのが良いでしょう。最終的には創業者は自分で交渉に臨む必要がありますが、外部の意見を聞くのは悪いことではありません。これらの指針を守っていれば問題ないでしょう。

 

シリーズAに関する具体的助言

 自分が最も大事にしていることがタームシート内に明記されているかを必ず確認すると共に、タームシート後にレバレッジがどの程度減少するかを理解しておきましょう。

タームシートに署名したら、創業者はほぼ必ず30~45日間の「ノーショップ」または「独占」条項に拘束されます。これは、その期間中は現在話をしている投資家とのみ交渉ができること、つまりその投資家の交渉レバレッジが高まることを意味します。

理論的には、問題が生じたことにより、タームシート署名時には断わった他の投資家との交渉を再開する場合、その独占期間が過ぎるのを待つことができます。しかし実際には、この時点で破損商品とみなされるのが一般的です。他の投資家は常に、最初に選ばれた投資家のタームシート後デューディリジェンスで不都合が発覚したこと、創業者との信頼関係を築くのが難しいこと、またはその他の手厳しい推論、などを理由にディールが決裂したのではないか、と考えてしまいます。

これら全てから導かれる結論は、こうしたディールで創業者にとって本当に重要なこと、例えば取締役会の支配、創業者保有株式のベスティング、投資家が持つ拒否権の内容などは全て、正式合意文書まで保留にしておくのではなく、理想的にはタームシートに明記されている必要があるということです。創業者が必ず早い段階で明確にしておくべき事項については、ぜひYCAの標準的タームシートをご参照ください。また、創業者と投資家が討議してきた標準的ではない特殊事項もタームシートに必ず盛り込まれるようにしてください。

シリーズAの条項は将来ラウンドの先例となることを忘れず、それを有利な条項の獲得に活用しましょう。

大半の投資家、特にシリーズA投資家は、それらの先例が及ぼす影響を理解しています。例えば、投資家が残余財産優先分配権2倍(1,000万ドル投資した投資家は、普通株式への分配前に2,000万ドルを受取る権利を獲得する)など一般的ではない条項を求めてきたとします。この条項は表面上投資家が得するものですが、短期においてのみ得するものです。長期的には、この条項はシリーズB投資家が同様のことを要求するための先例となりますが、それは5,000万ドル投資する場合かもしれません。すると実際には、シリーズA投資家の資金回収がより困難になります。なぜなら、企業は将来的に6,000万ドル(1,000万ドル+5,000万ドル)ではなく、少なくとも1億2,000万ドル(2,000万ドル+5,000万ドル×2)の収益を上げる必要があるからです。そして、シリーズC投資家、シリーズD投資家、シリーズE投資家なども同様のことを要求してくるでしょう。

拒否したい条項に関しては、それは将来的に投資家が同じことを要求する先例となるおそれがあること、シリーズA投資家に後日悪影響を及ぼすおそれがあることを説明してください。最も効果的な主張の1つは、投資家が要求していることは長期的には創業者と投資家双方を悩ます問題になると指摘し、長期的には、特にスタートアップの価値の大半はその期間に生み出されるため、双方にとってメリットとなる構造を作り上げたいと伝えることです。さらに、これは投資家が本当に長期的視点を持っているかどうかを相手に失礼のない形で確認するテストともなります。

「業界一般」の条項はどんなものか理解し、それらの基準を活用して少なくとも土台となる一般的なディールをまとめましょう。

この点に関しては、YCにおける標準的なタームシートを参考にすることができます。ここではあなたの弁護士も良いリソースとなります。条項の意味を完全に理解していなくとも、創業者は、投資家の要求は業界一般の内容から乖離していると伝えることでいつでも抵抗することができます。

近頃の投資家のほとんどは、創業者との友好的関係を目指します。そうした投資家との付き合い方を理解しましょう。

多くの場合、「創業者が求めるものを与えるか、もしくは創業者の要求を拒んで創業者に友好的ではないとみなされるか」の選択に投資家を追い込むのに効果的な具体的言い回し、またはそうした議論に導く方法が物を言います。「創業者に配慮した内容にできませんか」または「これは長期的なWin/Winの関係を築くものとは思えません」と言うだけでも上記のような効果がある場合もあります。

これが最も影響を及ぼす可能性がある領域が、支配権(取締役会の支配または投資家の拒否権)および創業者の経済性(希釈化の結果および創業者のリバースベスティング)に関する交渉です。支配権に関しては通常、「これは創業者から支配権を奪うものに見えます。なぜこうしたいのですか。この企業の経営を私たちに任せたくないのですか。これは創業者に配慮したものとは思えません」のように率直に、創業者の支配権喪失を創業者への配慮がないものとして話を組み立てます。

経済性に関してはより多くの困難が伴います。なぜなら、創業者にとってのさらなる希釈化またはリバースベスティングは、投資家にさらなるオーナーシップまたは株式が渡ることになるのが一般的だからです。しかしその場合でも、例えば「これでは私や共同創業者に企業のわずかX%しか残りません。長期的にビジネスを作り上げるのは私たちです。ですから、私たちのオーナーシップをこんなに少なくしたい理由が理解できません。これで創業者に配慮したものだと言えるのでしょうか。」と言って、創業者への配慮がない内容であると抵抗することができます。

特定の条項**ではなく、高レベルの成果**を勝ち取る交渉に注力しましょう。

例えば、創業者3名:投資家2名、創業者2名:投資家1名、創業者3名:投資家1名:独立取締役1名などの取締役会の様々な構成を論じるのではなく、「創業者が確実に取締役会の支配権を維持できるようにしたいのですが、成果としてこれに合意し、タームシートに記載する詳細は弁護士に任せても良いでしょうか。」のように結論にフォーカスすることができます。

創業者がこのアプローチを採ったほうが良いのは、投資家は特定の条件が組み合わさることで得られる成果について、創業者よりもはるかに良く理解しているからです。しかし、創業者が成果を重視する場合には、対等の立場となり平易な言葉で話し合うことができます。そうすれば、創業者は仕組みや詳細を弁護士に任せるよう投資家に依頼できます。

さらに、成果の重視により、投資家が創業者に不利となる特定の条項を要求することがより困難になります。なぜなら、投資家は具体的意味合いを正面から扱い、気まずい質問をしなければならないからです。この具体例を挙げますと、創業者が取締役会の支配権を維持できるかどうかを交渉している場合は、投資家はその維持を認めるか、または拒否するかを創業者に明確に説明する必要があります。しかし、創業者が取締役会の具体的な構成、例えば創業者2名:投資家1名:独立取締役1名から創業者2名:投資家1名への変更など、について交渉している場合は、投資家は要求の含意について明確に答える必要はありません。これにより投資家は独立取締役の追加はいかにガバナンスを向上させるかについて語ることができると共に、投資家と独立取締役が創業者2名と異なる投票を行った場合には取締役会が膠着状態に陥るため2:1:1構造は創業者の支配権喪失につながることへの言及を避けることができるかもしれません。

堂々巡りの議論になって提案されている条項の含意を完全に理解している気がしない場合は、躊躇せず(1)支配権と経済性という点で、これは創業者にとって具体的にどのような意味があるのか、つまり一方/両方を失うのか、と率直に尋ね、(2)顧問弁護士や共同創業者と相談する時間が欲しいと伝えてください。この状況では、「くだらない」質問をして信用や尊敬を失うことを心配する必要はありません。これらの適切なディールの方法を理解するのは投資家の仕事であって、創業者の仕事ではありません。創業者の仕事は、他の誰よりも正しくビジネスを理解し、実行することです。

 

注記:

[1]法律文書が実際に意味することを理解せずに署名している人の数は衝撃的です。そうした行為は、取締役会における予期せぬオブザーバーの存在、議決権支配の喪失、または予期せぬ希釈化を招きます。

[2]資産に割安感がある企業の株式を大量に購入する投資家である「乗っ取り屋」に関しては、これは少々異なります。

[3]両者が善かれと思ってやっているにもかかわらず、交渉が信じられないほど白熱して、不当な扱いをされていると両者が感じる場合もあります。これは避けられないことですが、軽減させることは可能です。

 

次のセクション:
投資家の選び方

本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide

ajax-loader