レバレッジの最大化

レバレッジの最大化

 

創業者がどのように投資家とのミーティングを行うかは、市場を自分に有利な状態にできるかどうかに影響を及ぼします。連続的資金調達か並行的資金調達というのは大きな違いです。連続的資金調達では、創業者は各投資家と順番に面談していきます。一方、並行的資金調達では創業者は複数の投資家と同時に面談し、複数のプロセスが同時進行することになります。

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投資家に有利な市場を生み出す連続的資金調達

一般に、アーリーステージのスタートアップは投資家に有利な市場で活動することになります。これは主に、そうしたスタートアップの創業者が投資家に行うピッチが連続的であるためです。創業者は、自分と面談してピッチを聞いてくれるよう、投資家を1人ずつ説得していきます。創業者が投資家と行うミーティングにおいて、投資をするか否かは、全て投資家の判断にかかっています。

創業者が新しい投資家とのミーティングを重ねるにつれ、その企業に関する情報はミーティング実施前の他の投資家にも伝わっている可能性が高いでしょう。これは、投資家のネットワークは比較的小規模かつ協調的であることが多いからです。そのため、企業と面談する投資家には情報の優位性が生じ、a)この企業は以前に投資を断られている、b)この企業は成長途上にある、といった情報を知ることができます。

この力学の中では、投資家はプロセスや条件を自由に設定することができます。ディールの進行が遅い場合は、それを急かす理由はありません。逆にディールの進行が速い場合は、投資家は条件や返済能力に関する膨大な知識を駆使して要求を提示できます。これは投資家にとっては最高の状況です。

創業者に有利な市場を生み出す並行的資金調達

情報の優位性を覆すことができる創業者は、自身に有利な市場を作り出すことができます。創業者が多数の投資家を同じ出発点に並べられる場合、投資家は同時進行での対応を余儀なくされます。これは、投資家が得た情報がどのようなものであれ、ネットワーク内で拡散する時間が少ないため、投資家がそれぞれ単独で意思決定をしなくてはいけなくなる、ということを意味します。

さらに、投資家は市場が迅速に動いているか否かを把握できないため、市場は迅速に動いているという仮定の下に意思決定を行う必要が出てきます。そうした仮定の下に行動しないと、他の投資家に先を越されて投資の機会を失ってしまうからです。

純粋な心理的レベルにおいて、こうした不透明さは投資家のように競争心旺盛な人々の集団内に競争の力学を生み出します。これは創業者にとって非常に大きなアドバンテージとなります。

YCは、スタートアップ企業をひとまとめにすることで、この考えをさらに進化させました。YCカンパニーは共同で資金調達を行うため、その時々の市場情報の共有だけでなく、特定の投資家に関する有益な情報の伝達も積極的に行っています。これはスタートアップのための労働組合のようなもので、私たちは団体交渉に類似したことができるようになりました。団体交渉は昔も今も、効果があります。

投資家には、「そもそも創業者に有利な市場が形成されることを阻止したい」というインセンティブがあるため、創業者には(市場が存在する期間に有するレバレッジに加え)そうした市場が形成される直前にも多大なレバレッジが生まれます。創業者は、資金調達時はいつでもこうした力学を生み出すことができます[1]。

シリーズAのプロセス

デモデーがあることによって、私たちは創業者に有利な市場を得るには、実際のデモデーが不可欠だと思い込んでいました。しかし、私たちはシリーズAプログラムを開発したり、デモデー以外でも多数のシリーズAが行われたりするのを目にするなかで、最も重要なのはデモデー自体でも投資家の数でもない、ということに気付きました。最も重要なのは、デモデーが創業者と投資家に参加を強いるプロセスです。創業者は、自社に対して初めてかつ同時にアクセスする投資家の数を複数にすることで、資金調達時にいつでもこれと同じ力学を生み出すことができます。

創業者はステージ毎のミーティングを短期間に集中させることで、自身に有利な市場が続くようにします。最初のピッチは全て1~2週間のうちに、パートナーシップに対するピッチはまた別の1~2週間のうちにそれぞれ行う必要があります。理想的なのは、投資家同士が共謀したり、または他の投資家が投資を見送ったと知られたりすることなく、同時にオファーをもらうことです。

この段階でよく見られる2つの間違いがあります。創業者の中には最初のミーティングを何ヵ月にもわたって続け、市場を投資家に有利なものに戻してしまう人もいます。そしてさらに良くないのが、タームシートの提出に関して意図的にタイトな期限設定をしてしまう創業者です。後者の場合、企業とディールの勢いが相当なものでない限り、投資家からは良い回答が全く来なくなる傾向にあります。

連続的資金調達をうまく行うには巧みな手腕が必要とされます。なぜなら、相手の企業を熟知している、つまり、近いうちに資金調達プロセスが始まることを知っている投資家には、他の投資家たちを出し抜こうという強いインセンティブが生まれるからです。創業者はここで慎重に対処する必要があります。創業者は、まず全てのファンドが同じペースで行動するよう、最初のミーティングは短期間で行われるよう徹底させる必要があります。

その一方で、資金調達が正式に開始される前に好条件をオファーできる、優秀かつ十分に積極的な内部の投資家も複数存在します。こうした緊張状態の均衡は状況によって異なり、当該ラウンドに利害関係を有さない人物に相談をするのが得策です。こうした先行オファーは、プロセス運営を行わずに受諾するのに十分なほど良い内容であることが多いです[2]。

こうした先行オファーを受諾しない創業者は、プロセスを前進させる必要があります。タイトなプロセス管理をすることで、規模は多少小さいかもしれませんが、YCの創業者がデモデーで経験するのと全く同じ市場を作り出すことができます。何週間もかけてではなく、1週間で全てのミーティングを行う効果には目を見張るものがあります。と同時に、ずさんなプロセス運営―創業者がスケジュールを把握していない、またはかなり強引な期限を設定している場合―は、有望な企業の資金調達を失敗に終わらせてしまうおそれがあります。

 

注記:

[1]本セクションの後半はシリーズAのプロセスに特化しているものの、その資金調達ラウンドを問わず、全ての企業は同様の手法を利用することができます。

[2]これはYCのシリーズAプログラムで数多く行われています。

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過剰最適化の回避

本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide

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