プロセスの適切な管理

プロセスの適切な管理

タイトなプロセス管理をすることで、創業者は勢いの維持とレバレッジの最大化ができるようになります。ここでの創業者の目標は、ディール締結に向けて争っている「他の投資家」という非常に現実的なプレッシャーを活用して、投資家に迅速な行動を促すことです。適切なプロセス管理には、短期間でのミーティング設定と情報フローの管理という2つの重要な要素があります。

短期間でのミーティング設定

創業者の目標は、資金調達を短期間で行い、投資家グループを同じフェーズに同時に置いて競争させることにあります。ここでは、単独パートナーとの正式なピッチミーティングを1週目に5~10回、2週目にさらに5~10回それぞれ行うことを推奨します。私たちが知っている限り、創業者が1日に2~3回以上のピッチを行うことは難しいようです。有益な経験則では、投資家にピッチを行うのは2週間で最大30人となっています。ただし、ここでは創業者が適切なプロセス管理を行っている必要があります。

創業者からよく尋ねられる質問に、「本命の投資家へのピッチは、最初と最後どちらに行うべきか?」というものがあります。これは創業者がどれだけ自分のピッチに自信があるか、また、さらに時間をかけることでどれだけピッチが洗練されると思うかによります。練習をさらに重ねることでピッチの不備をなくすことができますし、ティア1の投資家はより迅速に行動するのが一般的で、ティア2の投資家に追いつくのに十分な速さで行動できます。しかし、ティア2のリード投資家から始めて全員が「ノー」と言った場合は問題が残ります。全員から断られたディールであるという印象を与えないためにも、優れたリード投資家は十分近い位置に置いておく必要があります。私たちの経験では、1週間のリードタイムは一般的に問題ないと言えます。

情報フローの管理

創業者がピッチを行う際、その時点で相手とは商取引の関係となり、創業者が提供する情報は相手の意思決定アルゴリズムに反映されます。

資金調達上、有益となる情報には2種類あり、これは創業者が入念に管理する必要があります。1つ目は、他の投資家の行動に関する情報で、自分がターゲットとしている投資家の行動に影響を与えます。2つ目は、自社ビジネスに関する情報で、これは投資家がイエス/ノーの意思決定をする際の判断材料となります。

自社の資金調達に関する情報

創業者の目標は、資金調達の状況に応じた適度な量の情報を各投資家に与えることで、緊張感を維持すると共に、当該プロセスにおける彼らの前進を促すようにすることです。

皆さんに興味を持った投資家は、皆さんとのミーティングから24~48時間以内に連絡をしてくるでしょう。数日経っても回答がない場合は、プロセスを少し進展させるために「ラウンドは進んでいます(ですから、あなたもグループに加わるべきです)」と、それとなく伝えるのが良いでしょう。これを可能にするのが、資金調達に関する情報の戦略的共有です。以下のような情報共有方法が例として挙げられます:「私は1週間ずっとミーティングで埋まっています」と伝えたり、GPとのミーティングが予定されている場合は、「あなたとのミーティングは実に有意義なものでした。今後も現在のプロセスを進行させ、次のステップについての話し合いを続けさせていただきたいと思っています。ちなみに、来週はすでにパートナーシップミーティングでのピッチでスケジュールが埋まってしまっています」と伝えたりします[1]。

投資家は勝負に勝つことを望んでおり、競争の激しいディールはクラウドソースされた価値指標といえます。しかし、それと同時に、投資家はプレッシャーを感じることを好みません。創業者は投資家に過剰な圧力をかけることなく、バランス良く物事を進捗させる必要があります。これは巧みな手腕を要する作業です。

例えば、タイトかつ作為的な回答期限を設定して投資家に偽りのプレッシャーをかけてはいけません。これがうまくいくことは稀で、相手に悪い印象を与えます。優れた投資家は創業者のビジネスに強い確信を持つ必要があり、プロセスを過剰に迅速化させるような戦術はその妨げとなるおそれがあります。相手の投資家についてよく知り、彼らに自社ビジネスに対する強い興味を持ってもらうためには、大抵の場合、少なくとも数回のミーティングが必要です。あまりに強く、早いプッシュは、投資家にディールを見送る判断をさせてしまうおそれがあります。

そのため、各状況において場の空気を読み、押すべきなのか、引いて流れに任せるべきなのかを判断することが重要となります。経験豊富な投資家は自分の知識や経験に基づいて、創業者のビジネスに対して素早く確信を持つことができますが、経験の少ない投資家はより保守的になる傾向があります。

結局のところ、投資家も「人」です。彼らは根本的な部分において「自分は他の人とは違う」と信じたいわけです。なぜなら、それが彼らの主な競争優位性だからです。ですから、「多額の資金が関わっていることも事実ですが、私が本当に必要としているのは『あなた』なんです」という思いをアピールしてください。こうしたアピールをする際、創業者は、自身のコミュニケーションスタイルやレトリックなどに応じて独自の方法を見つける必要があります。

タームシートを実際に受領した場合、そのタームシートを「プロセスを加速させる戦術」として使うのは、受領したタームシートを実際に受諾するつもりの場合のみにしてください。なぜなら、タームシートを使ってVCにプレッシャーを与えることは、彼らに24~48時間以内にイエス/ノーの回答を迫ることになり、場合によっては他の全ての投資家を当該プロセスから排除してしまうおそれがあるからです。

買収のオファーがあった場合、それを使ってVCにプレッシャーをかけるのは避けてください。なぜなら、これは(上場を目指すのではなく)少額で自社を売却しようとしているというメッセージになるからです。これは創業者に対する投資家の印象に悪影響を及ぼすおそれがあります。現実味があるオファーで内容も良いと思える場合は並行して資金調達プロセスを進めますが、この情報は資金調達とは別に、極秘扱いとしてください。

自社ビジネスに関する情報

時間と情報は資金調達プロセスを推進させるリソースです。投資家はできる限り多くの時間と情報がほしいと思っていて、これら2つの配分先を考えるのは創業者の仕事です。創業者は、投資してくれる可能性が最も高い投資家に時間と情報を費やす必要があります。そうした投資家を判断する良い方法は、創業者が提供する情報に対する投資家の反応を見ることです。投資家がディール締結に関心を寄せている場合、追加情報の獲得はプロセス内における次のステップへの前進につながるはずです。

時間を節約するためには、まず、情報が必要となった時に共有できる標準的なディリジェンスパッケージをまとめておくことをお勧めします。標準的な情報の例としては、損益計算書、予測、資本政策表などがあります。これらは話を進める際にも役立ちますし、当該プロセスにおける作業負荷も減少させます。情報共有時は、可能な限りDocSendなどのサービスを利用して、誰が何を閲覧しているかの追跡を行いましょう。

2番目の戦略は、情報のリクエストを通じてどのような疑問に答えようとしているのか、投資家に尋ねることです。この手法は、(1)投資家の質問に、より効率的に回答する方法を把握し、(2)その投資家が興味のあるふりをしている(さらに悪い場合は、競合他社のサポートまたは競合ディールの評価を目的とした情報収集をしている)だけなのかを見抜くのに役立ちます。

ピッチでスケジュールが埋まっている中で投資家の関心度合いを確認したい場合は、「現在はピッチでスケジュールが埋まっており、数日以内にリクエストにお応えするのは難しいですが、フルパートナーシップミーティングでのピッチ前には喜んで提供します」と回答するのも1つの手です。そこで先方からフルパートナーシップミーティングでのピッチの設定があれば、相手の関心を示す好材料といえます。先送りされた場合、その状況を評価するのは創業者の役割です。

投資家がデューディリジェンスをするためには、創業者から秘密情報を提供する必要がありますが、専有情報の共有は避けてください。私たちが考えるこの2つの情報の違いとは、専有情報はあなたの会社や製品の複製、または顧客の引き抜きに利用可能な秘密で構成されている、ということです。以下は提供して差し支えない情報と提供するべきでない情報の例です:

  • 通常提供される情報:月次損益計算書、高水準のメトリック。
  • どちらとも言えない情報:毎月の顧客別収益内訳。
  • 提供するべきでない情報:法律書類および契約書、主要顧客との契約内容および(特定顧客が自社収益の大半を占めている場合は特に)顧客のフルネーム。

カスタマーリファレンスの共有は一般的ですが、同意済みできちんと準備ができている積極的な顧客のみに限定してください。準備ができていない、または投資家に連絡を取ってほしくない顧客はウェブサイトから削除することをお勧めします。過去にはカスタマーリファレンスが良くなかったために投資を見送った投資家や、さらに悪いことには、未同意かつ予期せぬデューディリジェンスのための電話を受けた顧客との関係が悪化した例もありました。

創業者が投資家に提供しなくてはならない自社ビジネスに関する情報量と、創業者が当該ディールで有しているレバレッジの量は、総じて逆相関の関係にあります。わずか数社しか参加していない場合、情報共有の拒否によってそのうちの1社をプロセスから排除してしまうような余裕はありません。そのため、状況は企業や資金調達の特質によって異なります。

最後に…

結局のところ、シリーズAに資金を提供した投資家は今後10年間、取締役会に名を連ねることになるため、良好な関係の維持が最も重要になります。ここでのアドバイスを指針としてください。会話のセンスを磨き、意思決定を行うのは創業者の仕事です。

注記:

[1]言うまでもありませんが、これは事実である場合のみ、言えることです。

 

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特殊なケース

本コンテンツは Y Combinator の許可を得て FoundX が翻訳しています。
翻訳元: Y Combinator Series A Guide

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